タダより怖いものはない?!注意すべき「無償サンプル」の輸出入について
みなさんこんにちは。坂田貿易支援事務所のフォワーダー出身、Iです。
・営業担当から無償サンプルの海外発送を任された
・輸入貨物と一緒に無償サンプルが同梱されていた
皆さんはこんな経験はありませんか?
街頭での無料サンプル配布、ネット注文に添えられたプレゼント、スーパーの試食コーナーなど、身近なところに「無料」はあふれています。
商品の販促として「無償サンプル」はとても有効な手段で、多くの企業が活用しています。
さて、貿易実務をしていると、この「無償サンプル」を手配する場面が出てきます。
貿易実務に慣れていない方ほど「無料だから支払いもないし、量も少ないし簡単だろう」と思いがちです。
しかし「無償サンプル」の輸出入は、特に注意が必要な業務のひとつです。
正しく手配をしないと最悪の場合、無償サンプルと一緒に送った貨物が期日に間に合わなかったり、貨物が税関に没収・廃棄される可能性もあります。
そこで今回は「無償サンプル」の正しい知識と手配についてお伝えしていきます。
目次
人の好意には注意!実際に起こった「無償サンプル」トラブル
「無料は嬉しい」は国内外共通の感覚です。相手への気遣いからサンプルやカタログを同梱することもあるでしょう。
事前に連絡してくれれば対応できますが、こうした「好意の同梱」は事後に発覚することが多く、特に輸入時にトラブルへ発展しやすいので注意が必要です。
実録:【輸入トラブル】無料サンプルによって通関に1週間かかったケース

工業製品を輸入している会社が、航空便で輸入した時のトラブルをご紹介しましょう。
航空輸送は、空港到着後に早ければ24時間以内に通関・配送手配ができるスピード重視の輸送手段です。
この会社も急ぎの貨物を航空便で輸入しましたが、現物が到着すると事前に入手していた情報より重量が重いことが判明しました。
重量に差異がある場合、原因が確認できるまで通関手配はストップします。仮にインボイスに記載のない貨物が含まれていた場合、それを申告しなければ通関業者は営業停止処分を受ける可能性があります。
そのため通関業者は、内容が確認できるまで手続きを進めることができないのです。
調査の結果、取引先が好意で会社案内とカタログを同梱していたことが判明。
インボイス・パッキングリスト・AWBを修正してようやく通関許可となりました。
しかし現地との時差や祝日が重なり、配送完了までに貨物到着から1週間以上かかってしまいました。
遅延による影響はスケジュールだけにとどまりません。
空港倉庫での保管料や、遅れを取り戻すためのトラックチャーター料など、余分なコストも発生しました。
「好意の同梱」がこれほどの影響をもたらすことを知っておいてください。
無償サンプルのトラブルを防ぐ3つのポイント
このように「無償サンプル」はトラブルになりやすいため、正しく理解し手配する必要があります。そのために3つのポイントをお伝えします。
①情報共有

無償サンプルのトラブルの多くは「事前に知らなかった」から始まります。
営業担当やバイヤーから出荷前に情報をもらえるよう、日頃から連携しておきましょう。
また、インコタームズ(EXW・FOB・FCAなど)を事前に決めておくことで、誰がどこまでの費用と責任を負うかが明確になります。
さらにサンプル品の材質・用途・サイズ・重量は通関業者が申告内容を確認するために必要な情報です。
「サンプルだから大丈夫」と省略せず、通常の貨物と同じ感覚で共有しましょう。
②輸出書類に必ず記載する(記載されているか確認する)
書類の不備は通関遅延の原因になります。
品名は「Sample」とだけ記載するのではなく、内容がわかる形で記載しましょう。
また無償であっても、インボイスの金額欄に「0円」と記載するのはNGです。
輸入されるものは有償・無償に関わらず関税と消費税が課税されるため、その計算根拠となる、実際に有償だった場合の価格を記載する必要があります。
その際、インボイスには「No Commercial Value – Value for Customs Purpose Only」と特記することで、税関に対して商業取引ではないことを正しく申告できます。
パッキングリストへの重量記載も、どれほど小さく軽い荷物であっても省略しないようにしましょう。
③急ぎの貨物と同梱しない
無償サンプルを急ぎの貨物と同梱すると、サンプルの確認に時間がかかった際に本来必要な貨物まで足止めされるリスクがあります。
無償サンプルは出来るだけ単独輸送にするか、国際宅配便を使って手配するのが安全です。
その場合も②の書類ルールは同様に適用されますので、忘れずに対応しましょう。
サンプル(有償・無償問わず)で注意すべき商品

特に食品・化粧品・医薬品などは、厚生労働省の食品検疫や薬機法に基づく事前申請が必要な場合があります。
申請なしに輸入しようとすると、税関で止められるだけでなく、廃棄処分になるケースもあります。
輸出の場合は、取引先の国の輸入規制に問題がないかも確認が必要です。
「サンプルだから関係ない」という思い込みが思わぬトラブルを招きますので、悩んだ場合は通関業者や貿易アドバイザーに事前相談することをおすすめします。
無償サンプルこそ油断せず正しい手配を行おう
「無料だから簡単」は貿易実務では通用しません。
無償サンプルは対価をもらわないため、送る方は軽いおまけのつもりで入れているかもしれませんが、通関上は立派な輸出入貨物として扱われます。
書類の不備や事前確認不足が、急ぎの本業貨物を巻き込む大きな問題に発展することもあります。
大切なのは「サンプルだから」と軽く見ないこと。
情報を早めに集め、書類を正確に整え、急ぎ貨物とは切り離して手配する。この3つを基本にすれば、トラブル発生を大きく減らせます。
執筆者:I(坂田貿易支援事務所 貿易実務代行担当)
貿易実務とフォワーダー業、合わせて約16年の現場経験をもとに、輸出入に関わる皆さんが国際輸送をスムーズに進められるようにお手伝いをしています。
絶賛子育て中です。好きな食べ物はプリンです(固め派です)。
