和食器・陶磁器の輸出 | 販売先の探し方、破損・クレーム対策【事例有り】
みなさんこんにちは。坂田貿易支援事務所のAIBA認定貿易アドバイザー、和食器が大好きな石川ゆきです。
今年もGWは有田陶器市・波佐見陶器まつりに行ってきました。
どこもかしこも魅力的な器がたくさん並んでいて、大変眼福なひとときでした!


(今年の戦利品の一部です)
さて、最近は海外での和食人気の高まりとともに、陶器や磁器でできた和食器の輸出も伸びてきています。
坂田貿易支援事務所や、石川がアドバイザーを務める公的機関にも陶磁器メーカーからの輸出のお問い合わせが増えています。
そこで本日は、事例も交えながら陶磁器の輸出についてお伝えしたいと思います。
この記事はこんな方におすすめです:
・陶磁器を輸出したいがどうやって販路を見つけたらよいかわからない
・陶磁器の引き合いがあったが、クレームが不安で放置してしまった
・陶磁器を輸出したことがあるが、輸送途中で破損してしまった
目次
陶磁器の販路開拓
海外販路開拓は、基本的には①国を決める ②ターゲットと販路開拓の方法を決める、という順番で進めていきます。
順番は前後しても構いませんし、途中で何かズレているなと思ったら、戻ってやり直しても構いません。
1.国を決める
まずは日本の陶磁器、和食器が売れそうな国を検討します。
「日本食人気がある国」を基本に、「高単価が通るか」「器への価値認識のある文化か」などを見ていきましょう。
候補国の選定の際に参考にするとよい観点には、以下のようなものがあります。
市場性

「和食人気」に加え、「器(和食器)にお金を支払う文化があるか」を見ます。
日本食レストランの数・訪日観光客の数などで、和食や日本文化に親和性があるかがある程度推測できます。
またライフスタイル系のショップのECサイトや高級レストランのウェブサイトなどで、値段よりも高付加価値・デザイン性・商品のストーリーが評価されやすい文化があるか、器や料理を演出として捉える文化があるか等が推測できます。
価格受容性
海外輸出の場合、現地の小売価格は商品自体の価格に輸送費や関税、通関費用、現地の小売マージンなどを加算しなければならないため、最終的に日本の小売価格の2~3倍になることも珍しくありません。
従って、関税率やEPAの利用可否、為替動向なども含め「自分達の商品を買える物価・年収水準の国かどうか」ということも考慮に入れておく必要があります。
その他のポイント
食器として使用する陶磁器は食材に接するため、国ごとに定められている食品接触材の規制に該当する場合があります。
例えばアメリカではFDA(アメリカにおける厚生労働省のようなところ)が鉛およびカドミウム、銀メッキ製容器における鉛の溶出量に関する基準を設けており、溶出量の測定方法が日本とは異なること、一部の項目では日本の基準よりも厳しいことから注意と事前の準備が必要です。
具体的には、輸入業者と協力しながらその国の規制内容の確認を行う、その国の法律で定められた測定方法で検査を受けて証明書を準備する、契約書で責任範囲を定めておくといった対応を行うことになります。
2. ターゲットと販路開拓の方法を決める
次に、「誰に売るのか」を考えます。
ここが変わってくると、商流(流通構造)や価格、販路開拓の戦略などが全て変わってきます。
ターゲットを決めるためのポイントは3点です。
工芸品 vs 日常使い

高価格・一点物などの工芸品を販売したい場合は、ターゲットはホテル、デザイナー、富裕層の消費者などになります。
このターゲット層に商品を知ってもらうためには、まずはギャラリーやキュレーター(作家を発掘し、ブランディングを行い、アートフェアを企画したりギャラリーやホテル、シェフなどに繋いだりする人)と繋がる必要があります。
一方、日常使いの食器の場合は、ターゲットはレストランや小売業者(一般消費者)となります。そこに繋がるためには輸入卸会社を見つけるのが近道となります。
大量生産が可能 vs 少量生産
大量生産が可能である場合、店舗数が多いレストランやライフスタイル系の小売チェーンがターゲットとして射程圏内に入ります。
産地全体での取り組みなどの場合はこのルートが適しています。
形を統一させ、それぞれの作家が絵付けや色などをデザインしたラインナップなどを展開すると、統一感もありスタック(重ね置き)もできるのでバイヤーの興味を惹きやすいです。
この場合は輸入卸やレストランサプライ系、ライフスタイル系の卸業者と繋がるのが良いでしょう。
一方、工房が単独で海外販路開拓を行うような場合だと、求められる供給量や少量輸送の場合の輸送コストなどの問題で上記の商流には合わないことが多いです。
この場合は、むしろ限定感が価値になるような販路(高級レストランで使用する限定品や、価値がわかる方へのEC販売)などの戦略を採った方がよいでしょう。
こだわりの土、職人の手仕事、手書き、伝統的な登り窯、希少な釉薬、一つ一つ形が異なるなど、大量生産できない理由が逆に価値となります。
クラフト系の越境ECサイトであれば、日本語対応もされているEtsy から始めるのがおすすめです。
業務用 vs 小売用
業務用の場合は、販売先は現地のレストラン等になります。現地の輸入卸からレストランサプライ系の会社を通じてレストラン等へ販売されるルートを当たります。
業務用の場合は、レストランの規模によっては、使用中の割れなどによる追加発注ができることが条件になることがあります。その場合、シリーズとして同じ形・デザインを維持して生産できるかということがポイントになります。
小売用の場合は、販売先は小売店を通した一般消費者となります。
同じく現地の輸入卸からライフスタイル系のセレクトショップや百貨店、そこから一般消費者へ販売されるルートを当たりましょう。
お店に並べた時にスタッキング(重ね置き)ができるか、目を惹くカラーラインナップがあるか、食洗機や電子レンジ対応ができるかということもポイントになります。
輸入卸やサプライ系の会社と出会うには、フランスのMaison&Objet やドイツのAmbiente のような日用品の展示会へ出展するのがおすすめです。
また、全てのターゲットに共通して、クラフト系の商品はウェブサイトやInstagramなどでの情報発信がとても重要になってきます。
作家の人となり、大事にしていること、作陶風景やその土地の風景、技術、こだわりのポイント、土、釉薬、窯、歴史、その土地の特徴、器にまつわるストーリーを、丁寧に撮った写真や動画とともに一つ一つ投稿してください。英語のハッシュタグと本文を併記すると尚良いです。
ギャラリーやキュレーターはInstagramで情報収集を行うことも多く、積極的に海外販路開拓を行っていなくてもEUのギャラリーや中東のキュレーターからダイレクトメッセージで引き合いが入ってきたという相談者もいらっしゃいました。
また展示会などに出たときに、バイヤーは必ず工房のInstagramなどをチェックします。魅力的な写真と文章で、展示会で伝えきれなかった思いを受け取ってもらうことも大事です。
輸出の際の注意点
和食器・陶磁器を輸出する際に注意するポイントを3点、事例と対策に分けてお伝えします。
輸送中の割れ・破損
一番気になるのが輸送中の割れや破損の対策だと思います。実際の例を見てみましょう。
事例
アメリカ向けに船便での輸送中、300枚中4枚が割れてしまっていたと輸入者からクレームがあった。小売業者への納品は300枚揃っていないといけないという条件だったため、割れた4枚分の充当品を空輸で送ることになってしまった。
対策
よく取られる対策が、輸送中の破損を前提に、契約条件に数%の予備品を入れる運用です。
こちらの会社は次の発注から、毎回予備として3%分の商品を無償で同梱し、契約書には「3%以内の輸送時の破損は予備品をもって充当する。それ以上の破損については次回注文時に無償で同梱する」という記載を行いました。こうすることで、割れた数枚分だけ追加発送しなければならないリスク(物量が少ないため輸送コストが商品原価の何十倍~何百倍になります)を防ぐことができました。
この時に、無償の予備品についてもインボイスには0円ではなく有償の場合と同じ金額を記載することに注意してください。
無償品を送るときの注意点について詳しく知りたい方は、ぜひこちらの記事も読んでみてください。
また、インコタームズで責任範囲を明確に指定しておく、出荷前に写真を撮っておく、梱包仕様を契約で決めておく(輸送中の割れだと証明できない場合や梱包不良が原因の破損の場合、貨物保険の免責になることがあります)といった対策も大切です。
品質クレーム
割れや破損以外にも、クレームが発生するケースがあります。
事例
香港の小売店向けに30個のカップを輸出したが、柄や釉薬にムラがあり不良返品の連絡があった。
対策
日本では「味」とみなされる手作りによる個体差・ムラですが、海外バイヤーと認識を統一しておかなければ「不良」とみなされることがあります。
この場合の対策としては、色ムラや釉薬ムラ、手作りの個体差、小さなピンホールなど、考えられる限りのクレーム要因を検品ルールとして具体的な写真とともに細かく定めておく、契約に「手作り陶器特有の色・釉薬・質感・形状などの軽微な差異は欠陥とみなさない」といった一文を入れるなどの対応を取ります。
電子レンジ・食洗機対応可否
欧米は食洗機文化であることや、和食器は土物の食器(土鍋など)も多いため、こちらもよく問題になります。
事例
フランスのレストランに金彩のついた食器を輸出したが、半年後に金彩が消えたとクレームが入った。原因は業務用の高温食洗機にかけ続けたことだった。
対策
食洗機や電子レンジの対応可否、土物の急冷や水を含んだ状態での急熱不可などの注意事項については、契約だけでなく商品説明書(もしくはラベル)などで明示しておきます。
しっかり対策して日本の素晴らしい陶磁器を世界へ広げよう
陶磁器の輸出は、きちんと対策を行えば怖いものでも難しいものでもありません。
記事で紹介している以外にも、より詳しいマーケティング戦略の立て方や販路開拓の方法、クレームを防ぐための手法などをお伝えしながら一緒に海外販路開拓を進めてまいりますので、これから陶磁器を輸出してみたい、引き合いがあったけれどもやり方がわからなくて断ってしまったという方は、ぜひ坂田貿易支援事務所にご相談ください。(個人的に、日本の陶磁器が大好きなのでぜひ世界に広げるお手伝いをしたいです)
執筆者:石川ゆき(坂田貿易支援事務所 代表)
約20年の実務経験を持つ、AIBA認定貿易アドバイザー。複雑な規制や日々変わるルールの海で、貿易に挑む企業様が迷わないための「羅針盤」であることをモットーとしています。正しい知識を武器に、貴社のビジネスを共に広げていくお手伝いをしています。本記事が、貴社のリスク管理の一助となれば幸いです。

