輸出の始め方を徹底解説!貿易初心者が成功するための手順と注意点

貿易初心者必見 成功するための手順と注意点 輸出の始め方 徹底解説

みなさんこんにちは。
AIBA認定貿易アドバイザーの石川です。

少子高齢化による日本市場の縮小への不安や、海外からのインバウンド客の増加などにより、貿易を新たに始める企業が増えてきています。
貿易を始めるメリットは販路拡大、リスク分散、利益率向上など様々ありますが、「貿易を始めたいけれど、何から手をつければ良いのかわからない」という方も多いようです。
本日は貿易の全体像と、具体的なステップについて解説したいと思います!

この記事はこんな方におすすめです

・輸出にチャレンジしたいが、具体的なステップが分からない方
・貿易の基礎を学び、最初の一歩を踏み出したい方
・成功するためのコツやトラブル回避のポイントを知りたい方

貿易の基本を理解しよう

まずは貿易の基本となる部分について理解しましょう。

 貿易とは?輸出と輸入の違い

貿易の定義や輸出入の仕組み、貿易の種類などについて説明します。

 貿易の定義(国内取引との違い) 

貿易とは、ある国と別の国の間でモノやサービスの取引を行うことです。
国をまたいで取引が行われるため、国内取引と違って国を出る時・別の国に入る時にそれぞれ「輸出通関」「輸入通関」という手続きを行わなければいけません。
海外へ行く時に人間が「出国」「入国」の手続きを行うのと同じですね。

通関手続きが必要

また通関手続きの際は、貨物の内容や価格、売り手や買い手の情報などを英語で記載した「通関書類」が必要になります。
時々、段ボールに詰めた貨物を運送会社に持ち込んで「これアメリカに送りたいんだけど」とおっしゃる方がいますが、国内の宅急便のように簡単には送れないということに注意しましょう。

なお今までで一番びっくりしたのは、事前の連絡もなく生きた魚を氷漬けにしてトロ箱で運送業者の事業所に持ち込んだ猛者でした!

法律、商習慣、言語などの違い

また国が異なることから、法律、商習慣、言語なども異なります。
輸入規制などは輸入する国の法律により定められていますので、国によって規制内容が異なることに注意します。

輸送の違い

輸送についても国内取引と貿易取引では異なる点があります。
国内取引の場合、主流は陸路(トラック)での輸送です。
一方、日本の場合は島国で海に囲まれているため、貿易取引の際は必ず飛行機か船で輸送することになります。
国内取引よりも輸送日数が長くなることが多く、かつ輸送品質も日本よりは低い国が多いので、梱包などを工夫する必要があります。

船でヨーロッパやアメリカに送る場合だと約3〜4週間も船の上にいることになり、機械などであればその間に湿気で貨物が錆びたりすることもあります。
赤道直下を通る場合、常温コンテナの中は60度くらいまで温度が上がることもあります。

 輸出 vs 輸入の基本的な仕組み

日本在住の企業を主体として考えた場合、輸出とは、基本的に商品を日本から日本以外の国に販売することです。
日本の税関に対し輸出通関の手続きを行い、許可が降りたら貨物を船や飛行機に乗せることができます。輸出通関に使用する通関書類は輸出者が作成します。

一方輸入とは、日本の会社が海外から商品を購入することです。
貨物が日本の港や空港に到着したら日本の税関に対し輸入通関の手続きを行い、許可が降りれば貨物を引き取ることができます。

輸入通関に使用する通関書類は輸入者が作成するのではなく、輸出者が輸出通関の際に作成したものを送ってもらって使用します。

 貿易にはどんな種類がある?

貿易にはどんな種類がある?

貿易の種類について説明します。

 直接貿易 vs 間接貿易(特徴・メリット・デメリット)

メーカーが国内の商社を通して海外のバイヤーと取引を行う間接貿易(間接輸出)と、海外のバイヤーと直接取引を行う直接貿易(直接輸出)があります。

間接輸出の場合、メーカーの実際の取引先は国内の輸出商社であることから、通常の国内取引とやることはほとんど変わりません。
通関書類の作成、国際物流の手配といった実際の輸出の手続きや海外との決済は、間に入った商社が行うことになります。

直接貿易と間接貿易の違いやメリットデメリットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

 B2B貿易とB2C貿易(企業 vs 個人取引)

B2B(B to B)貿易というのは、ビジネス→ビジネス、つまり企業間取引のことを指します。
一方B2C(B to C)貿易というのは、ビジネス→コンシューマー(消費者)、つまり企業から消費者に対して販売する取引のことを指します。
B2B貿易が海外向けの卸売、B2C貿易が海外向けの小売のイメージですね。

一般的な貿易の場合、B2Bでの取引がメインになる

その理由は、大きく分けて2つあります。
1つめは、一度に送る貨物が多ければ多いほど輸送費や貿易実務作業に対する単価が下がる、つまりスケールメリットが大きいということです。
2つめは、現地での輸入規制や販売規制を詳しく調べるには、現地に協業企業がいた方が有利だということが挙げられます。

越境ECは輸入規制を受けない?

最近では越境EC(えっきょうイーシー) と呼ばれる国際的なオンライン販売の仕組みが普及し、以前よりも簡単かつ低コストで海外の消費者へ小口の貨物を送ることが可能になりました。その影響もあり、B2Cで輸出を始める人も増えています。
しかし、よくある誤解のひとつに、B2C(個人向け販売)であれば一般的な輸入規制を受けないという考え方があります。このため、「越境ECは輸出の第一歩として最適」と主張する人もいますが、これは正しくありません。

実際には、個人輸入であっても輸入規制を受ける国があるため、B2B貿易と同様に注意が必要です。特に食品、化粧品、医薬品などは法律や規制が厳しく、さらに国ごとに規制内容が異なります。
そのため、越境ECで輸出を始める場合は、まず規制の少ない雑貨などからスタートすることをおすすめします。

貿易を始めるための5つのステップ

貿易を始めるためのスモールステップ

貿易の基本を理解したところで、貿易を始めるためのステップを5段階に分けて解説します。

 1. 自社の状況を整理し、取引の形態を決める

社内に語学や貿易のスキルがある人間がいるかどうか、また自社の輸出の目的、商品の特性などによって直接貿易(直接輸出)・間接貿易(間接輸出)・越境ECのいずれにするかを決めます。

 2. 相手国の市場調査を行う

輸出しようとする国をいくつかピックアップし、それぞれの国の市場調査や需要調査を行います。
「こういうものが売れるのではないか?」というアイデアを思いつくのはとてもいいことです。ただ、それが自分の思い込みではないか、本当に現地にそのようなニーズがあるのか、売れる土壌があるのか(現地の経済的な状況を含め)は客観的な調査が必要です。

ニーズ調査はインターネットでも簡易的にできますので、ある程度情報を集めた上で、可能であれば一度自分の目で現地市場の視察に行くこともお勧めします。

3. 取り扱う商品を決める

現地のニーズに沿った商品の選定を行います。

相手国の市場調査で得た現地の特性から、自社の商品の中でどういうものが売れそうかという視点で検討します。
また、いくら需要があってもその国で輸入できなければ意味がありませんので、輸入規制の調査も同時に行います。

輸入規制についてはまずはJETROのウェブサイトでざっくりと確認するのが良いでしょう。可能であれば現地での関税率やEPAの利用有無などについても調べておきます。
最近はスナック菓子やレトルト系の食品の人気が高いですが、食品は現地の国での規制が厳しいものが多いので十分注意して調べます。

一番販売できる可能性の高そうな国から優先順位を付け、その国における競合分析やターゲットの分析を行い、輸出する商品の内容、価格、流通方法、販促方法などを検討していきます。

 4. 販売先を見つける

輸出したい商品と対象国が決まったら、具体的な販売先を探しましょう。

展示会への出展が効果的

予算によって取れる方法は異なりますが、確度の高い商談を期待できるのは展示会への出展です。
さまざまな国のバイヤーと話をしたい場合は、国内で開催される国際展示会が適しています。
一方、販売したい国が明確に決まっている場合は、現地の展示会に出展すると効果的です。

可能性調査として出展するポイント

展示会出展時によく見られるのが、価格や販売体制が整っていない段階で「可能性調査」として参加するケースです。
しかし、たとえ可能性調査であっても、仮の価格設定や商品内容の整理、競合との差別化ポイントを明確にしておくことが重要です。そうすることで、バイヤーからより具体的なフィードバックを得ることができ、商談の成功率も高まります。

商談の前に、輸出向けの見積価格、MOQ(最低販売数量)、決済条件などをきちんと検討しておきましょう。

 5. 貿易実務の流れを理解する

商談がまとまれば、物流や通関の手配を行います。いわゆる輸出貿易実務と呼ばれる業務です。

初めての貿易で失敗しないためのポイント

貿易で失敗しないためのポイント

ここでは、初めての貿易でトラブルになりやすいポイントや、失敗しないために押さえておきたいコツについてお伝えします。

トラブルになりやすいポイント

トラブルになりやすいポイントは大きく分けて4つあります。

1. 法規制の見落とし

なんといっても、現地で輸入できなければどうしようもありません。輸入規制についてはその国の法律で決められているものなので、ダメなものはダメ、何をどうしても覆りません。
輸入自体が認められていないもの、輸入するのに必要な検査や書類があるものなど、規制の内容は国や品目により様々です。

大量の貨物を輸出して現地で輸入許可が降りず滅却処分になった場合、貨物が失われるだけではなく、輸入通関の間滞留していた貨物の保税倉庫での保管費用(普通の倉庫よりも高いです)や滅却費用なども追加コストとしてかかってきます。

2. 積み上げコストの見落とし

輸出取引は、通関費用、港湾作業費、関税、貨物保険など、国内取引の際にはかからない経費の種類が多いです。
それ以外にも、例えば国内と海外で梱包を変更した場合の追加コストや、海外から求められたラベルを貼ってから出荷する場合のラベル代や手間賃、海外から着金する際にかかる被仕向送金手数料など、ちょこちょことした追加経費を計上漏れしていて、最終的に赤字になってしまったということもよくあります。

 3. 決済トラブル

後払い条件にしていたが貨物を送った後支払いがなかった、貨物受け取り後クレームを付けられて価格を下げるよう主張された等、決済に関するトラブルは後を絶ちません。
また価格にどこまでの費用が含まれているか、貨物の引き渡し地はどこなのかについて価格と合わせて伝えておかなかった場合もトラブルになりがちです。

 貿易を成功するための3つのコツ

トラブルになりやすいポイントを学んだところで、貿易を成功させるためのコツを3つに分けてお伝えします。

 1. 専門家のサポートを受ける

初めての輸出の場合は、まずは専門家と二人三脚で進めていくことをお勧めします。

貿易は初めての人にとってはわからないことだらけですが、ミスが起きやすいポイント、トラブルになりやすいポイントなどはある程度パターンがあります。
1人だと、初めての貿易は落とし穴だらけの真っ暗闇を進むような作業に思えるかもしれません。
しかし知識と経験が豊富な専門家が一緒であれば、どこに落とし穴があるのかわかった状態でしっかりと対策を立てながら進めることができるのです。

特に初めて輸出価格を組み立てる時は、できるだけ専門家に相談しながら行うか、間違いがないかチェックしてもらうようにしましょう。
お近くのJETROや、私達のような民間のアドバイザーへの相談がおすすめです。

坂田貿易支援事務所の貿易アドバイス業務のご案内はこちらです。

 2. スモールスタートで始める

いきなり本番の輸出を行うのではなく、本番前にサンプルや小さなロットで輸出入テストを行いましょう。

これは輸送品質を確認し、実際に輸入できるのか・輸入の際にどのような書類や手続きが必要なのかを実務的に確認するためのテストです。最悪輸入許可が降りずに滅却処分になってしまったとしても許容できる範囲の小ロットで行います。

3. 支払条件は100%前払いにする

相手の信用が構築できるまでは、支払条件を100%前払いにすることをおすすめします。相手が前払いを承諾しない場合は、L/C(信用状)や貿易保険の利用を検討します。

貿易初心者でも、輸出に成功できる!

初心者でも輸出に成功できる

一歩ずつ準備を進めれば、貿易は難しいものではありません。
最初は専門家の力も借りながら、小規模で始めてみましょう。

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