税関の事後調査とは?税関から突然連絡が!今からできる対策も

税関の事後調査とは?税関から突然連絡が!今からできる対策も

「事後調査を行いますので、2日ほどお時間をいただけますか?」

突然税関からこの電話を受けて、初めて「税関の事後調査」という制度を知ったという企業は少なくありません。

既に輸出入を多く行っている企業の中にも、「輸出入申告の際に輸出許可・輸入許可が下りれば、それで手続きは終わり」と考えている方が多くいらっしゃいます。
しかし実際には、輸出入許可から数年後に、税関による「事後調査」と呼ばれる事務所の訪問調査が行われることがあります。

本記事では、税関の事後調査とは何か、どのような流れで行われるのか、事前に準備しておくものは?といった内容を分かりやすく解説します。

この記事はこんな方におすすめです

  • ・税関から「事後調査のお知らせ」の連絡を受けたが、どうすればよいかわからない方
  • ・既に輸出取引や輸入取引を行っているが、まだ事後調査を受けたことがない方
  • ・今から輸出取引・輸入取引を始めようと思っている方で、税関の事後調査について対策をしておきたい方

税関の事後調査とは

税関が行う事後調査とは、輸出入の許可が下りた後、税関職員が輸出者や輸入者の事務所等を訪問し、取引に関係する書類や帳簿の内容を確認する調査のことをいいます。
調査は輸出入許可の直後に行われるものではなく、数年に一度まとめて実施されます。

なぜ税関は事後調査をするのか

「輸出/輸入申告の際に審査も受けたし、許可も出ているのになぜまた調査をするの?」と思われる方もいらっしゃると思います。
確かに輸出/輸入申告の際に書類審査や現物検査を受け「許可」を得ている以上、それで完了だと考えるのも無理はないと思います。

ただ、毎日の輸出入件数は膨大で、税関職員は限られた時間の中で審査をしています。また通関時は取引先とのやりとりや会計帳簿までは確認できません。
そのため、後日事業所を個別訪問し、経理関係の書類とも突き合わせを行いながら詳しく確認することで、税関は誤った手続き・申告の見逃しを防いでいるのです。

実は多くの企業が事後調査の存在を知らないまま輸出入を行っている

多くの事業者は、輸出入を始める際に「海外販路開拓の方法」「インボイスの作り方」「インコタームズ」などについては積極的に学びます。
一方、「輸出・輸入した後、数年後に税関から事後調査を受ける可能性がある」ということまでしっかりと教えてくれる人は多くありません。

多くの事業者は、税関の事後調査という制度があることを知らないまま貿易取引をスタートさせます。
輸出入を継続して行っている企業であれば、いつでも事後調査の対象となる可能性があります。そのため、「うちはまだ始めたばかりだから」「取引件数が少ないから」と安心はできないのです。

また、事後調査は3年~5年間隔で実施されることが多いと言われています。
長く貿易を行っている企業でも、前回の事後調査の際に担当した社員が退職して当時の記録や対応方法などが残されておらず、事後調査のお知らせがある度に大慌て、といったケースもよく見受けられます。
実は、私が若い頃に勤めていた会社もそうでした。私が初めての事後調査準備に慌てふためいていたところ、長く勤めている他部署の方に「海外部はオリンピックみたいに何年かに一回慌てふためいているね」と言われたことがあります…。

閑話休題。それでは、実際に事後調査の連絡が来たらどうすればよいのでしょうか。

事後調査の連絡が来たらまずやるべきこと

まずはメール等で送られてくる税関のお知らせをしっかり読みます。このお知らせに、準備しておくべき書類などが詳しく記載されています。
輸出入関係の書類だけでなく経理や総務関係の書類も多いので、担当部署と連絡を取りながら準備を進めましょう。
調査当日までに必要な書類が揃っているかいないかで、税関職員の心証も当日の進行のスムーズさも全く変わってきます!まずはとにかく書類を揃えましょう。

次に、お知らせと一緒に事後調査にあたっての事前調査票が添付されていますので、こちらもしっかりと項目を埋めて返信します。
仕入先・海外の取引先、財務状況等について入力する必要がありますので、普段から情報を整理しておきましょう。

それから、社内で前回の対応の議事録などが残っていないか確認してみましょう。
前回指摘された事項については事後調査直後は改善されていることが多いのですが、年月を経るにつれて元のやり方に戻ってしまっていることがあります。
同じ点について指摘される可能性が高いため、前回の指摘事項が改善されているかを確認しておきましょう。

事後調査の流れ

① 日程調整

事前に日程調整を行います。輸出の場合1~2日、輸入の場合2~3日が多いようです。

② 当日(概要説明)

当日、税関職員が複数名で事務所を訪問します。最初に事後調査の概要について説明があります。

③ 当日(調査)

準備しておいた書類や帳簿を税関職員に渡し、事務所内で調査が始まります。電子保存(パソコンやサーバーに保存)している書類がある場合はパソコンの貸与を求められる場合があります。

調査中はずっと同席している必要はありませんが、調査の途中で何度も質問があるため、すぐに連絡を取れる体制を取っておくことが求められます。

④ 統括

調査が終われば、調査結果について総括のお話があります。ここで全て終了ということは少なく、当日中に判明しなかった問題や追加調査が必要な問題について、いくつか宿題が示される場合が多いです。

定められた期日までに宿題について対応します。調査後のやりとりは基本メールか電話になります。

⑤ 宿題

宿題の提出で解決した場合、クロージングとなります。

もし申告内容が間違っていたり、必要な許可等を取得しないまま輸出入を行っていたと判断されれば、修正申告勧奨や行政処分などが行われます。輸入の場合、申告漏れ(誤った関税納付)があった場合は追徴課税が賦課されます。

事後調査でよく指摘される事例3件と罰則規定

よく指摘を受ける事例と、罰則規定をご紹介します。

いずれも貿易の知識・経験が少ない場合、違法だとわからないままやってしまったり、事前に必要な手続きがあることを知らないまま輸出入を行ってしまっていることがありますので、皆さんも当てはまっていないか確認してみてください。

アンダーバリュー

実際より低い金額で輸入申告を行うことを指します。特に、同じ取引なのに輸出国と輸入国で異なる金額で申告を行う行為は、より悪質とされます。

具体的には、輸入者が関税の徴収逃れをするため、実際のインボイス金額より低い金額のインボイスを作成し(または輸出者に作成させ)輸入通関に用いるような事例があります。

これはとても悪質な行為だと判断され、不足額分の納税や延滞税に加え、重加算税率が適用された過少申告加算税や無申告加算税が賦課されます。

アンダーバリューは通常の取引であれば「違法かもしれない」ということが理解しやすいのですが、サンプルなどを輸入する際は、悪意なく輸出者側に通常より安い金額でインボイスの作成を依頼されている方もいらっしゃいます。違法行為を行わないよう十分注意するようにしましょう。

▼無償サンプルの輸出入の注意点については、こちらの記事も参考になります。

評価加算申告漏れ

輸出者に無償や割引で提供した材料や資材などを、輸入時に加算申告していない場合に指摘されます。

インボイス自体は正しくとも、輸入申告の際の課税価格は、インボイス価格のみではなく「輸入する港/空港に到着するまでにかかったが、インボイス価格に反映されていない費用」を加算して申告する必要があります(これを評価加算申告といいます)。

例えば、インボイスがFOBの場合は輸送費や海上保険料を加算して申告しなければいけませんし、商品を製造するために必要な金型等を無償で輸入者に提供している場合や、包装資材や原材料の一部を無償で提供している場合などは、それぞれ無償提供された分の費用を加算しなければいけません。

こちらも、加算しなければいけない金額が加算されていないことが調査で判明すれば、修正申告を行い、不足分の納税や延滞税などを納付します。

外為法の該非判定の判断違い

間違った該非判定により、貿易安全管理上、経産省の輸出許可を受けるべき貨物が許可を受けずに輸出され、無許可輸出となってしまった事例です。

報告書の提出から口頭注意、警告、最悪の場合は輸出禁止などの行政処分や、個人の場合は10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金(両方の場合も)、法人の場合は10億円以下の罰金と処分内容は幅広く、企業の信用も失墜します。
なぜそのような違反が起こったのか、再発を防ぐために管理体制の整備も求められます。

主な違反行為を3件ご紹介しましたが、これらの違法行為について、もし「我が社もやってしまっているかも…」と思われた方も安心してください。事後調査の連絡が来る前に修正申告や外為法上の報告を行うことで、是正できたり、より重い罰則を回避できる可能性があります。
また過少申告加算税の税率も、どのタイミングで修正申告を行ったかで0%、5%、10%と大きく変わりますので、不安がある場合は事後調査のお知らせ有無に関わらず見直しを行い、もし間違いが発覚した場合はできるだけ早く修正申告を行いましょう。

日頃から準備しておくべきもの

事後調査の連絡を受けてからこれらの見直しを行ったり、書類を集めたりするのはとても大変です。
事後調査の際に提出しなければならないものは、お知らせを受けてから準備するのではなく、普段の業務ルーティンに取り入れておくとよいでしょう。

① 書類

出荷案件ごとに必要書類(輸出許可書・輸入許可書、インボイス、パッキングリスト、B/L等、該非判定関係書類、発注に関する書類等)をファイルしておくのがベストです。
該非判定に関わる書類は、商品ベースで管理しておくとよいでしょう。
また入金・送金に関わる書類も求められますので、送金明細や入出金が確認できる資料をすぐに出せるよう経理の方と調整しておきます。

書類の保存方法は紙でも電子データでも大丈夫です。また電子データの場合のフォルダの分け方などは業務上都合のよい仕分方法で構いませんが、「これを出してください」と言われた時にすぐに出せるように、検索やソートをかけられるようにしておきましょう。

② 帳簿

必要な情報(品名、数量、価格、取引先の名称、許可年月日、許可書の番号)を記載した帳簿をExcelなどで作成しておくことも大事です。これは事後調査の際の検索にも役立ちます。

書類と輸出の帳簿は輸出入の許可日の翌日から5年間、輸入の帳簿は7年間の保存が義務づけられています。こちらもデータでの保存で構いません。

③ 電子取引情報

案件によっては、背景事情について取引先とのメールのやりとり等の提示を求められることもあります。保存期間は同じく5年となりますので、サーバーの設定などに注意してください。

こんな場合は専門家へ相談を

坂田貿易支援事務所では、皆さんの貿易取引管理体制を、税関の事後調査を見据えて整備します。

「これから輸出・輸入を始めよう」と思われる方は、最初から適切な準備設計を行うことで、これらの不安を取り除くことができます。

また、現在輸出入を行っているがまだ税関の事後調査が入ったことがない、もしくは調査の連絡が入ったが調査日までまだ日数があるという方は、今が体制見直しの大きなチャンスです。

  • 該非判定など、普段から適正な輸出手続きを適切に行い、記録を残しておくこと
  • 評価加算項目を踏まえた適正な輸入通関申告を行うこと
  • 事後調査に備えた必要書類の保管体制構築などの準備設計

これらに不安を感じる方は、いつ税関からの電話を受けてもいいように、私たちと一緒に今から準備を進めてみませんか。

執筆者:石川ゆき(坂田貿易支援事務所 代表)

約20年の実務経験を持つ、AIBA認定貿易アドバイザー。複雑な規制や日々変わるルールの海で、貿易に挑む企業様が迷わないための「羅針盤」であることをモットーとしています。正しい知識を武器に、貴社のビジネスを共に広げていくお手伝いをしています。本記事が、貴社のリスク管理の一助となれば幸いです。

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