輸出時の消費税還付、忘れず申請していますか?必要書類と注意点【プロが解説】
みなさん、こんにちは。
坂田貿易支援事務所のAIBA認定貿易アドバイザー、石川ゆきです。
「輸出すると何やら消費税が返ってきてお得らしい」という話を聞いたことがありませんか?
そんなうまい話があるわけがない、違法な方法なのではないか?と不安に思っている方もいるかもしれません。
本日はそのような疑問や不安を解消するため、輸出時の消費税還付の仕組みや、必要な手続きについて説明していきます。
結論から言うと、この制度は「得をする制度」ではなく、使わないと逆に「損をしてしまう制度」です。
知らない間に大きな損失を出してしまわないよう、輸出企業は還付が受けられる要件や必要な準備をしっかりと確認しておきましょう。
この記事はこんな方におすすめです:
・輸出還付が気になるが、違法なものではないかと心配されている方
・自分たちが輸出還付を受けられるか知りたい方
・輸出還付を受ける方法や要件を知りたい方
目次
輸出還付は使わないと損をする制度!
輸出時の消費税還付の仕組み

まずは、消費税そのものの仕組みと、なぜ還付が行われるのかという背景について説明します。
消費税そのものの仕組みは少し複雑ですが、ここをしっかりと理解することが輸出還付の理解にも繋がります。
消費税とは
国税庁のウェブサイト「消費税の仕組み」では以下のように説明されています。
“消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税される税で、消費者が負担し事業者が納付します。”
“消費税は、商品・製品の販売やサービスの提供などの取引に対して広く公平に課税されますが、生産、流通などの各取引段階で二重・三重に税がかかることのないよう、税が累積しない仕組みが採られています。”
また、「課税される取引」として
“国内において事業者が事業をして対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税されますので、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。”
“外国から商品を輸入する場合も輸入のときに課税されます。”
と記載されています。
つまり簡単にまとめると、消費税は
①消費者が負担するが、納付するのは事業者
②流通の各段階で二重・三重に課税されることはない
③国内での取引の際や、商品を輸入した時にかかる
という性質のものだということがわかります。
消費税の納付と仕入税額控除(国内取引の場合)
それでは、消費税の①消費者が負担するが、納付するのは事業者②流通の各段階で二重・三重に課税されることはないという性質についてもう少し詳しく見ていきましょう。
①消費者が負担するが、納付するのは事業者
普段の生活で体験されていることなので理解しやすいと思います。
皆さんはお店で税抜100円のノートを買った時に、お店に対して110円支払いますよね。
その内10円が消費税になりますが、これは消費者の皆さんが国に対して直接納付するのではなく、受け取ったお店が代わりに納付しますよ、ということを説明しています。
②流通の各段階で二重・三重に課税されることはない
こちらはもう少し複雑なので、具体的な例を元に見ていきましょう。
例えば国内メーカーAが、税抜300円で材料業者Bから材料を仕入れて、加工を行い、国内消費者Cに税抜500円で販売したとします。
その場合、メーカーAから見たお金の流れは以下のようになります。
Ⅰ.仕入代金の支払い:300円+消費税10%(30円)=330円
消費税の30円は材料業者Bへ支払いますが、材料業者Bから国に納付されます。
Ⅱ.売上時の受け取り:500円+消費税10%(50円)=550円
消費税の50円の内、30円はⅠの仕入の際に材料業者B経由で既に納付しています。
ここで消費者Cから受け取った50円をそのまま納付すると、500円の商品に対して材料業者B経由で30円、売上の際に50円で合計80円の消費税を納税することになり、二重納付になってしまいます。
消費税の性質には②流通の各段階で二重・三重に課税されることはない、というものがありました。
このため、実際には売上時に消費者Cから受け取った消費税50円から仕入時に材料業者Bに支払った消費税30円を引いた20円だけを国に納付します。
この仕組みを「仕入税額控除」といいます。
国としては、500円の商品に対して材料業者Bから30円、メーカーAから20円の納付を受けるため、合計50円と正しい額の納付を受けることになります。
輸出時の消費税
消費税の仕組みを理解したところで、次は輸出の際の消費税の取り扱いについて考えていきましょう。
まず、消費税は「③国内での取引の際や、商品を輸入した時にかかる」税金であることから、海外との取引である輸出貨物に対しては消費税を乗せて販売することができません。
国内販売であれば、税抜1,000円のTシャツを販売する際は国内の買手から税込で1,100円受け取りますが、海外輸出の際、海外の買手から受け取るのは1,000円のみです。
請求書(インボイス)にも消費税については記載しません。
輸出を始めて間もない企業は、この仕組みを知らず海外企業からも消費税を受け取ってしまっているケースを時々見かけます。
税関の事後調査や税務調査で指摘を受けることになりますので注意しましょう。
消費税の納付と輸出時の還付制度(海外輸出の場合)

それでは、海外輸出の場合の消費税はどのように取り扱えばよいのでしょうか。
先ほどお話ししたように、海外へ販売する場合は海外の買手から消費税を受け取ることはできません。
それでは「受け取りもしない代わりに納付もしない、それでOKではないか」と考える方もいらっしゃるかもしれません。はたしてそれは正しいでしょうか?
海外輸出の場合、メーカーAから見たお金の流れは以下のようになります。
①仕入代金の支払い:300円+消費税10%(30円)=330円
消費税の30円は材料業者Bへ支払いますが、材料業者Bから国に納付されます。
ここまでは国内取引と同じですね。
②売上時の受け取り:500円
ここが国内取引と異なる部分です。国内取引の場合は消費者Cから50円の消費税を含む550円を受け取りましたが、海外取引の場合は国内で消費されるものではないので消費税を受け取ることができません。
そのため、国内取引の場合のように「仕入控除」を受けることができず、仕入れの際に支払った30円が手出し=赤字となってしまいます。
「受け取りもしない代わりに納付もしない」ではなく、正しくは「受け取れないのに仕入の際に余分に払ってしまっている」状態なのです。
この赤字部分を防ぐため、「商品が確かに輸出されたことが確認できれば、仕入時に支払った消費税を還付します」という制度が消費税の輸出還付制度です。
還付を受けられる企業・受けられない企業
輸出時の消費税還付は全ての人が受けられるわけではありません。
ここではどんな企業が還付を受けられるのか、または受けられないのかを見ていきましょう。
還付を受けられる企業
以下の企業は、還付を受けられます。
課税事業者
売上1,000万円以上の課税事業者、または売上が1,000万円未満でも「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出し、自ら課税事業者となった事業者が還付を受けられます。
輸出売上のある事業者
国内取引だけではなく、輸出での売上がある事業者に限られます。
還付を受けられない企業
以下の企業は、還付を受けることができません。
免税事業者
売上1,000万円未満で、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出していない免税事業者はこの制度の対象とならず、還付を受けることができません。
簡易課税を選択している事業者
課税事業者であっても、「簡易課税」を選択していると消費税の還付を受けることができません。
簡易課税では売上の数字にみなし仕入率を掛けて税額を計算するため、実際に仕入の際に支払った消費税を計算することができないからです。
そのため簡易課税を選択している事業者でこれから輸出還付を受けようとする方は、「原則課税」へ変更する必要があります。
還付を受けるために必要な書類
消費税還付を受けるためには、貨物が確かに国外に輸出されたということを証明しなければいけません。
そのために下記の書類の保存が義務づけられています。
保存期間は7年間です。
一般的な輸出の場合
・輸出許可書
郵便物として輸出するものの内、FOB価格が20万円を超えるもの
・輸出許可書
20万円を超える場合は郵便物であっても輸出通関の手続きと輸出許可が必要です。
郵便物として輸出するものの内、FOB価格が20万円以下のもの
・日本郵便株式会社から交付を受けた当該郵便物の引受けを証する書類および発送伝票等の控え(以下の事項が記載されたもの)
イ 輸出した事業者の氏名又は名称及び住所等
ロ 品名並びに品名ごとの数量及び価額
ハ 受取人の氏名又は名称及び住所等
ニ 日本郵便株式会社による引受けの年月日
20万円以下の場合は輸出通関が不要であるため輸出許可書が発行されません。そのため輸出されたことの証明として、輸出許可書の代わりに上記の書類を保存しておく必要があります。
よくある失敗と損失事例
消費税の輸出還付をうまく利用できていなかったり、適切に利用できていなかったために後から追徴課税が来たりしてしまう事例について紹介します。
事例1:相談している税理士が輸出取引に精通していない(還付を受けられない)
輸出取引を行っているにも関わらず、顧問税理士や相談している税理士から消費税の輸出還付について指摘や助言がない場合、その税理士が輸出取引に精通しておらず、消費税の輸出還付について詳しくない可能性があります。
還付申告があると税務署は厳しく審査しますので、慣れていない場合は嫌がる税理士もおられるようです。
まずは相談してみて、あまり詳しくないようであれば他の税理士にセカンドオピニオンを取ってみてもよいかと思います。
その場合、できればセカンドオピニオン先は顧問税理士から紹介を受けるか、都道府県の税理士会のウェブサイトで検索し、顧問税理士に確認を取ってから行うのが良いでしょう。
事例2: 書類を適切に保存していなかった(還付を受けられない・追徴課税)
前述の通り、確かに国外へ輸出したということが証明できなければ輸出還付は受けられません。
フォワーダーを利用した一般的な輸出であれば、輸出許可が下りた時点かB/L・AWBが発行された時点、もしくは遅くとも請求書送付の時点で輸出許可書を一緒に送ってこられることが多いと思います。
クーリエの場合は事業者の方からリクエストしなければ送ってこないところも多いです。
輸出の都度輸出許可書をリクエストするようにしておきましょう。
受け取った輸出許可書は7年間、納税地等で保存が必要です。
還付時には輸出許可書を保存していても、税関の事後調査の際に紛失していると追徴課税となる可能性があります。
こんなケースはどうする?実務での注意ポイント
実際に実務をしているとよくあたる、対応に悩むケースと解決方法についても紹介しておきます。
ハンドキャリーの場合

ハンドキャリーで貨物を輸出する場合、FOB価格が30万円を超える場合は輸出通関が必要ですので、輸出許可書を入手することができます。
貨物のFOB価格が30万円以下の場合、輸出のことだけを考えれば口頭での申告でも可能ですが、消費税の輸出還付を受けようとする場合は、輸出の証憑として保存するため「託送品申告書」を提出し、輸出許可の税関印をもらっておきましょう。
A4の紙1枚ですので、搭乗前のバタバタした時に受け取り出張中に紛失してしまう方も少なくありません。受け取ったらすぐにチケットホルダーやパスポートケースに挟む等、絶対になくさないように保管するようにしましょう。
EXWの場合
貿易条件がEXWの場合、輸入者がほとんどの手続きを行ってくれるため、国内取引と同じように進めてしまっている輸出者がよく見受けられます。
EXWはあくまで輸出であることから、①輸入者への販売価格に消費税を乗せない②消費税の還付手続きが可能、という2点に注意してください。
EXWの場合、輸出通関申告を行うのは輸入者です。そのため輸出許可書を輸入者から入手する必要があります。
輸入者によっては、「輸出する」という前提でEXWで商品を購入したものの、実際には輸出せずに国内で転売してしまうような事業者もいます。その場合輸出者は輸出許可書が入手できず、消費税の輸出還付が受けられないということになります。
このような事態を防ぐために、契約書(Sales Contract等)に「所有権・処分権は輸出許可後(船積み時など)に移転する」と明記しておくと良いでしょう。
あなたの会社は損をしていませんか?簡単自己チェック
輸出時の消費税還付について理解したところで、現在の自社の状況について簡単に自己チェックをしてみましょう。
以下に当てはまるものをチェックして、チェックされた項目の数を数えてみてください。
【チェックリスト】
□ 輸出売上があるが、輸出還付を受けていない
□ 輸出証明書類を体系的に管理していない
□ 税理士から輸出還付について説明を受けていない
□ 税理士から輸出許可書の提出を求められたことがない
□ 消費税の還付はあるが、輸出のものか把握できていない
□ しっかり理解できていないが、なんとなく今の処理で問題ないかと考えている
□ 税務調査で指摘されないか不安がある
【判定】
・0~2個:現時点では大きな問題はない可能性が高いです
・3~4個:一部見直しが必要な可能性があります
・5個以上:還付漏れが発生しているリスクが高いです
輸出時の消費税還付を確実に行い、資金の取りこぼしを防ごう
輸出時の消費税還付は、正しく理解して活用しなければ、本来戻ってくるはずの資金を取りこぼしてしまう可能性があります。
特に、輸出許可書などの証憑管理、取引条件ごとの実務対応は、見落としや誤処理が起こりやすいポイントです。
自社では問題ないと思っていても、実は還付漏れや将来の税務リスクを抱えているケースも少なくありません。
少しでも不安がある場合は、輸出実務に詳しい専門家に早めに確認することが大切です。
坂田貿易支援事務所では、輸出実務全般のサポートはもちろん、輸出時の消費税還付に関する実務上の注意点や書類管理のご相談にも対応しています。
自社の状況に合った進め方を知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
約20年の実務経験を持つ、AIBA認定貿易アドバイザー。複雑な規制や日々変わるルールの海で、貿易に挑む企業様が迷わないための「羅針盤」であることをモットーとしています。正しい知識を武器に、貴社のビジネスを共に広げていくお手伝いをしています。本記事が、貴社のリスク管理の一助となれば幸いです。
