直接貿易と間接貿易どちらがおすすめ?違いとメリット・デメリット
こんにちは、AIBA認定貿易アドバイザーの石川です!
「今から貿易を始めたいけど、自社でやるのが良いのか商社を通してやった方がいいのかわからない…」と悩んでいる方は多いと思います。
今回はそんな方に向けて、「うちに合っているのは自社貿易だ」「うちは商社を通す方が向いている」と判断できるような、それぞれの違いとメリット・デメリットを解説します!
この記事はこんな方におすすめです
・貿易を始めたいと思っているが、何から初めて良いかわからない方
・自社の人材で輸出を始めるのは不安だが、商社を通すと高くなって売れないのでは?と悩んでいる方
・商社を通さずに貿易を始めるには何を準備すればよいか知りたい方
輸出を始める際は、まず最初に商流をきちんと決めておくことがとても大切になってきます。
まずはしっかりと直接貿易(自社貿易)、間接貿易(商社を通した貿易)の違いを理解して、自社にとってはどちらが合っているのかをしっかり判断してから一歩目を踏み出すことで、貿易を行う上で「こんなはずじゃなかったのに」と思うことが格段に減るはずです!
現在商社を通して貿易を行っているけれども、ゆくゆくは自社貿易に切り替えていきたいと思っている方にも参考になる内容になっていますので、ぜひ読んでみてください。
目次
直接貿易と間接貿易とは
直接貿易と間接貿易とはそもそも何なのか?詳しく説明していきます。
直接貿易とは
直接貿易とは、あなたの会社が輸出したい商品を国内の商社を通さずに、直接海外の買手に輸出販売することです。
”自社貿易””自社輸出”と言うこともあります。
貿易業界では”直貿”(ちょくぼう、じきぼう)と略して呼ぶこともあります。
1.直接貿易の輸出者
直接貿易の場合、輸出者は「自社」になります。
2.直接貿易の場合の自社の直接の取引相手
直接貿易の場合、自社の直接の取引相手は「海外のバイヤー」になります。
3.消費税
海外販売になりますので、海外のバイヤーから消費税を徴収することはできません。つまり、海外のバイヤーには税抜価格で販売します。その代わり、輸出を行ったことが証明できれば、その取引の仕入れにかかった消費税については輸出還付を受けることができます。
4.直接貿易に必要なスキル
直接貿易の場合、言語や商習慣の異なる海外のバイヤーへ直接売り込みを行わないといけませんので、「外国語のスキル」や「海外営業のスキル」が必要になります。
また自社が「輸出者」となるため、輸出手続きに必要な通関書類を作成したり、国際物流の手配を行ったりするための「貿易実務の知識」がある程度必要になってきます。
間接貿易とは
一方間接貿易とは、あなたの会社が輸出したい商品を国内の商社が国内取引で買い取り、国内の商社が海外の買手に輸出販売することです。
1.間接貿易の輸出者
間接貿易の場合は、輸出者は「国内の商社」になります。
2.間接貿易の場合の自社の直接の取引相手
間接貿易の場合、自社の直接の取引相手は「国内の商社」になります。
つまり、あなたの会社の商品自体は国内の商社を通して海外に行きますが、取引形態としては国内商社を相手とした通常の国内取引になります。
3.消費税
国内販売になりますので、買手からは消費税を徴収し、通常の納税を行います。
輸出還付を受けることはできません。
4.間接貿易に必要なスキル
海外のバイヤーへの売り込みや交渉、通関書類作成などの輸出の手続きは全て国内の商社が行います。国内の商社とはもちろん日本語でのやりとりが可能ですので、間接貿易を行う際は特に必要なスキルはありません。
直接貿易と間接貿易違いまとめ
輸出者 | 自社の直接の取引相手 | 消費税 | 必要なスキル | |
---|---|---|---|---|
直接貿易 | 自社 | 海外のバイヤー | 徴収しない 仕入分の消費税は 輸出還付を受ける | 外国語のスキル 海外営業のスキル 貿易実務の知識 |
間接貿易 | 国内の輸出商社 | 国内の輸出商社 | 徴収する | 特になし |
貿易を始める際は、まず最初に自社が直接貿易で貿易を始めるのか、それとも間接貿易で貿易を始めるのかを決めなければいけません。
直接貿易と間接貿易のメリット・デメリット
直接貿易と間接貿易の、メリットとデメリットについて、事例を交えて紹介します。
直接貿易のメリット
直接貿易では、以下のようなメリットがあります。
1. 海外のバイヤーと直接やりとりができる
これが直接貿易の一番大きなメリットと言っても良いと思います。
海外のバイヤーと直接連絡を取れるチャンネルを持っていることで、例えば売れ行きがあまり良くない時に理由を聞いたり、新しい販促方法の提案を行ったり、新商品が出た時に売り込みを行ったりということを自由に行うことができます。
2. どこでいくらで売られているか把握できる
商社を通した場合、商品がその先どのようなお店でいくらぐらいで売られているのかという情報をなかなか得ることができません。
直接貿易の場合は海外バイヤーと直接繋がっていますので、色々と情報交換を行いながら海外展開を進めていくことができます。
3. 商社のマージン分を省くことができる
商社を通さないため、その分海外バイヤーへ高く売れたり、現地での小売価格を抑えることができます。
4. 海外展開のノウハウを蓄積できる
自社で海外営業や輸出手続きを行うため、海外販路開拓や貿易実務に関するノウハウが蓄積されます。蓄積されたノウハウは、他の国に進出する際にも横展開できます。
間接貿易のメリット
一方、間接貿易でのメリットは以下のようなものが挙げられます。
1. 語学のスキルや貿易の知識が一切なくても輸出が始められる
間接貿易の一番のメリットはこれだという方も多いのではないかと思います。
海外営業、輸出手続きは全て商社が行いますので、輸出を始めるにあたって語学や貿易スキルのある貿易人材を確保したり、既存の社員を教育したりする必要がありません。
2. 貿易取引に掛かるリスクを負わずに輸出を始められる
実際に輸出を行うのは商社になるため、海外のバイヤーからの代金回収不安や為替リスク、輸送中の事故が起こった場合などのリスクについては全て商社が責任を負うことになります。
3. 輸送のコストを気にせず少量から輸出することができる
一度に運ぶ貨物量が多ければ多いほど輸送単価が小さくなり、販売価格を安く抑えることができます。
間接貿易の場合は商社が複数社の貨物を取りまとめて輸出することができますので、自社から出荷する貨物の量が少なくても、大口の貨物として輸送単価を抑えることができます。
直接貿易のデメリット
直接貿易のデメリットは、以下のようなものが考えられます。
1. 語学のスキルや貿易実務の知識が必要
自社で海外のバイヤーへの売り込み・交渉や輸出手続きを行う必要があるため、社内でそういったスキルを持つ人材を雇用・育成したり、後述のように代行業者に依頼する必要があります。
2. 貿易取引にかかるリスクの対応を取る必要がある
貿易取引を行う上で、海外のバイヤーからの代金回収不安や為替リスク、輸送中の事故が起こった場合など国内取引にはないリスクが発生します。
それぞれにリスクには確実な回避方法がありますが、それらの対応を自社で行う必要があります。
3. 少量の場合輸送コストの負担が大きい
間接貿易のメリットで述べた点の裏返しになりますが、一度に運ぶ貨物量が少なければ輸送単価が大きくなり、販売価格に反映されて高くなってしまい、なかなか商談が決まらない可能性があります。
間接貿易のデメリット
一方、間接貿易のデメリットには以下のようなものが考えられます。
1. 商社のマージンの分利益が少なくなる
商社が間に入る分マージンを取りますので、海外での小売価格を抑えようと思うとその分安い価格で商社に販売する必要があります。
2. 海外のバイヤーと直接やりとりができない
販売数量が落ちてきたので理由を知りたい、消費者の反応を聞きたい、新しい商品を提案したい、このような時に直接海外のバイヤーに連絡を取ることができないのはもどかしいものです。商社や担当によっては絶縁体のように感じてしまうこともあります。
3. 貿易に関するノウハウが蓄積できない
海外営業や輸出手続きは商社が行いますので、どれだけ売れても国内取引と変わりません。
別の国に展開したくなったとしても、輸出のノウハウが自社に貯まっているわけではありませんので、また別の国が得意な商社を探すところからのスタートとなります。
貿易スタッフがいない会社でも自社貿易を行う方法
ここまで読んで、「直接貿易に興味があるけど、自社の状況では難しそうだな」と感じた方もいると思います。
しかし、実際には自社で語学スキルや貿易スキルを持つ人材を新たに採用せずに直接貿易を開始している企業もたくさんあります。
そのような企業は、以下のような方法で直接貿易を実現しています。
代行業者を利用する
自社でできない業務を、貿易実務代行業者に委託する方法です。
貿易に関わる業務を全部丸投げできたり、逆に「輸出価格の策定だけ間違いのないようプロに見てもらいたい」「輸出向け展示会の当日の海外営業をお願いしたい」といった頼み方もできます。
坂田貿易支援事務所でも多くのお客様がこのサービスを利用されています。
弊所では1メニューだけのご依頼から全部丸投げまで対応可能、明朗会計、ご希望があればノウハウを共有し将来の直接貿易内製化に繋がるようにするということを心掛けています。
詳しくは下記もご覧ください。
公的機関や民間の人材育成サービスを使って人材を育成する
JETROや各自治体、商工会議所などで定期的に貿易実務講座が開催されています。無料や比較的安価で貿易実務を学ぶことができますのでお勧めです。
最近はオンラインで全国から受講できるものも多くなってきましたので、うまく活用していきましょう。
■公的機関の貿易実務講座の一例■
一般社団法人貿易アドバイザー協会(AIBA)オープンセミナーのご案内
※弊所代表、石川も時々講師を務めています。
また、上記のような公的機関の貿易実務講座では今はほとんど使われない信用状の解説など、自社の貿易では不要な知識も含め広く浅く解説を行います。坂田貿易支援事務所の人材育成サービスでは、その会社の貿易に必要な知識のみをカスタマイズした独自カリキュラムで社内向け貿易実務講座を開催しています。
困った時に相談できる相手を確保しておく
自社で人材育成を行い直接貿易を行う場合、一番気を付けないといけないことは貿易担当者に孤立感を与えないことです。
地方で貿易を行う中小企業の多くは貿易担当者を複数雇用することができず、貿易担当者は社内で相談できる人がいないため孤立感を抱きがちです。
少しでも困ったこと、相談したいことが発生した時に、すぐに専門家に相談できる体制を整えておくことで、人材の流出を防ぎ、初心者でも間違いのない貿易実務を行うことができます。
直接貿易と間接貿易の違い、メリット・デメリットを理解して貿易の一歩を踏み出しましょう!
直接貿易と間接貿易の違いについて、理解が深まりましたでしょうか?
準備を始める前に商流を決めておくことで、最短で無駄のない輸出に繋げることができます。
皆さんが直接貿易と間接貿易の違いやメリット・デメリットをしっかり理解し、より効率的で自社の状況に応じた貿易取引をスタートさせることができるよう応援しています!