【初心者向け】関税とは?仕組みと計算方法の基本をプロが解説【2026年最新】

初心者向け関税とは?仕組みと計算方法の基本をプロが解説

みなさんこんにちは。AIBA認定貿易アドバイザーの石川ゆきです。

貿易の仕事をしていると「関税」という言葉をよく聞くと思います。
「貿易の時にかかる税金だよね」という認識はあっても、「関税は誰が払うのか」「いくら払うのか」ということまでは詳しく知らない方が多いかもしれません。

関税は貿易相手国や商品の材質・用途等によって細かく設定されており、輸出者・輸入者ともにその知識の有無がビジネスの利益を大きく左右します。
今回は、約20年の実務経験を持つ認定貿易アドバイザーの私・石川が、初心者の方にも分かりやすく「関税の基本」と「関税計算の際の注意ポイント」を整理して解説します。

関税の役割と目的

まずは関税を理解するための基本となる、関税の役割と目的について学びましょう。

国内産業の保護という役割

関税の一番の目的は、「商品が輸入される国の産業を守ること」です。
例えば牛肉は、2026年現在、他国から日本に輸入する場合通常38.5%の関税がかかります。
仮に外国産の牛肉の価格がグラムあたり200円、日本産の牛肉の価格が100グラムあたり400円だとします。これだと、値段がほぼ2倍の日本産の牛肉を買う人は少ないですよね。
そこで政府は国産の牛肉が売れなくなるという事態を防ぐため、外国産の牛肉を輸入する時は、輸入者は38.5%の関税を税関に納めなければならない、という決まりを作りました。

この場合、輸入者は200円に対して38.5%=77円の関税を納めて輸入します。
納めた関税は輸入者にとっては輸入コストとなるため、その時点で仕入原価が200+(200×38.5%)=277円になります。
対して国産の牛肉を仕入れた場合、仕入原価は400円です。
200円vs400円だと戦いにならなくても、277円(購入者の体感としては約300円)vs400円であれば、「ちょっと高いけどやっぱり国産の牛肉を買おう」という層を取り込めるかもしれません。
そうすると、国内産業が大打撃を受け衰退することを回避できます。

これが、関税の「国内産業の保護」を目的とした役割です。

国家の財源としての役割

元々は、関税は「国家の財源」としての重要な役割も担っていました。
しかし日本においては、現在はこちらの役割は相対的に小さくなっています。

財務省のホームページにもこのように記載されています。

“関税は、他の租税同様、その収入は国庫収入となります。かつては、国家の財源として重要な位置を占めていました。国家間の経済交流が活発化し、貨幣経済が浸透する一方、国家の財政規模が巨大になり、国家の徴収体制が整備されるのに伴い、財源調達手段としての関税の意義は相対的に小さくなっていますが、厳しい財政事情の下でこれを適正に確保することは重要となっています。
(出典:財務省ウェブサイト「我が国の関税制度の概要」 )

一方、2025年にアメリカで導入されたいわゆる「トランプ関税」と呼ばれる相互関税のように、国内産業保護の名目ではあるものの、同時に国家財源としての期待もされているものもあります。

2026年1月8日付のブルームバーグの記事によると、トランプ大統領は2027の国防予算を現在より50%超増額し1.5兆ドルとすることを要求、その財源は2025年に課された関税による歳入で賄われると述べたと報道されています。
もしかすると、今後は財源としての役割も期待し、アメリカのように積極的に関税を上げる国が出てくるかもしれませんね。(個人的には、自由貿易の重要性が軽視される世界へ向かっているようで少し心配です)

関税は「誰が」「いつ」支払うのか?

上記の通り、関税は「輸入者」が「輸入時」に支払います。(厳密に言うと「納税」します)下記の図は簡単な輸入通関の流れです。今回は枠で囲った部分を説明します。

 

貨物が保税地域に搬入されると、国際運送業者(通関業者)が税関に対し輸入通関申告を行います。
申告後、貨物や書類の内容に問題がなければ関税と輸入消費税の納税額が決定し、国際運送業者から輸入者宛に税額決定の連絡があります。
所定の税額を納付すれば輸入許可となり、発行された「輸入許可書」と他の貨物引取に必要な書類を保税地域の担当官に示すことにより、貨物を引き取ることができます。

このように基本的には関税を納付しない限り輸入許可が下りず、貨物を引き取ることはできないというルールになっています。(例外的に銀行の連帯保証状(Letter of Guarantee | L/G)を船会社に差し入れることで貨物を引き取ることができる制度もあります)

昔は国際運送業者が税関に対し立替えて納付してくれていたこともありましたが、現在はほとんどの業者が立替払いを受け付けていません。
そのため、スムーズな貨物引き取りのために「リアルタイム口座振替方式」という、税額が決定すると自動的に輸入者の口座から引き落としがかけられるシステムが利用できるようになっています。

関税はどうやって決まる?「HSコード」と「課税価格」の基本

それでは、関税額はどうやって決まるのでしょうか。
これにはHSコードが大きく関わってきます。

商品の分類を決めるHSコードの重要性

年末になると「今年は自動車部品が〇兆円輸出されました」とか、「今年のバナナの輸入量は〇万トンでした」といったニュースを目にすることがありますよね。
このように、ある品目が一定の期間に輸出や輸入された金額や数量がなぜ算出できるかというと、世界中の全てのモノに「HSコード」という番号が割り振られているからです。
輸出や輸入の際は必ずこのHSコードと金額・数量を税関に申告するため、税関が輸出入されたモノの金額や数量の統計を取れるようになっています。
皆さんが今目にしているパソコンやスマートフォンも、お昼に食べたハンバーガーも、動物園で見た生きているキリンも、あらゆるものにHSコードが定められています。

HSコードは輸出入するモノの「材質」「用途」「製法」などによって細かく分類されます。
同じ「靴」でも防水性の有無、甲の部分が革製なのか布製なのか、底の部分がゴム製なのか木製なのか等でHSコードは別のものになります。
HSコードは、税関のホームページの「輸入統計品目表(実行関税率表)」で調べることができます。

参考までに、実際の輸入統計品目表(実行関税率表)は、このような構成になっています。

(出典:税関ウェブサイト 輸入統計品目表(実行関税率表)(2026年1月1日版) , PDL1.0

関税率はHSコードごとに決められている

なぜ関税額の話をするのにまずHSコードの話をしたかと言うと、関税率はHSコードごとに決められているからです。

先ほどの輸入統計品目表(実行関税率表)は品名の左側にHSコードが記載されていました。それを右にスクロールしていくと、輸入の際の関税率も併せて記載されています。

 (出典:税関ウェブサイト 輸入統計品目表(実行関税率表)(2026年1月1日版) , PDL1.0 )

関税率は「輸入される商品が輸出された国」によっても変わります。
基本的には「基本(General)」欄の税率を参照しますが、輸出された国がWTO加盟国であれば「WTO協定(WTO)」欄を参照します。
輸出された国との間で経済連携協定(Economic Partnership Agreement | EPA)を結んでいる場合は、特定原産地証明書の提出等の必要な条件をクリアすれば、そのEPAで定められた税率で輸入することができます。

商品代金だけじゃない?課税標準価格は「CIF価格」

ここまでで輸入商品の関税率が確認できましたが、それではこの関税率は何に掛ければよいのでしょうか?
実は課税の対象となる価格は「輸入商品のインボイス価格」ではなく、関税定率法等によって「CIF価格」と定められています。

輸入者から受け取ったインボイスに記載されている価格がFOBであれば「輸入港までの輸送費」「海上貨物保険料」を加算して申告する必要があり、関税額は(FOB価格+輸入港までの輸送費+海上貨物保険料)×関税率で計算されます。

0円の無償サンプルは課税されない?

こちらもよくある間違いです。
貿易では無償サンプルや修理返送品、前回の取引で不備があった場合の代替品など無償で商品を送ってもらうことがよくありますが、こういった場合も必ず「実際有償だった場合のCIF価格」で輸入申告を行い、その価格に関税率を掛けた関税額を支払わなければなりません。
従って、輸出者から送ってもらうインボイスには「0円」ではなく、必ず「実際有償だった場合の価格」を記載してもらい、「No Commercial Value – Value for Customs Purpose Only」のように特記してもらう必要があります。

正しい関税額の把握がビジネスの成否を分ける

想定の関税率と実際の関税率が異なれば、輸入コストの誤算に繋がり赤字になる可能性もあります。
従って、実際に輸入を行う際は、事前に正しいHSコードと正しい関税額を把握しておくことがビジネス自体の成否を分けることになります。
ただ、貿易に不慣れな方が自分達でHSコードを検討したり関税額を正確に把握するのには多くの時間がかかるかもしれません。確かめる時間が取れない時は専門家への相談が有効です。

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執筆者:石川ゆき(坂田貿易支援事務所 代表)

約20年の実務経験を持つ、AIBA認定貿易アドバイザー。複雑な規制や日々変わるルールの海で、貿易に挑む企業様が迷わないための「羅針盤」であることをモットーとしています。正しい知識を武器に、貴社のビジネスを共に広げていくお手伝いをしています。本記事が、貴社のリスク管理の一助となれば幸いです。